歌詞の意味を考える 〜「外は白い雪の夜」編〜

好評の?第二弾。
歌詞の意味を考えるシリーズです。

タイトルを見ても若い人はピンこないんじゃなかろうか。
ある程度ご年配の方ならピンとくるかもね(笑)

吉田拓郎氏の楽曲です。

1978年にリリースされたアルバム「ローリング30」に収録。
作詞はなんと、バンド「はっぴいえんど」の元ドラマー、松本隆氏です。

僕は両親の影響で、小さい頃から70年代のいわゆるフォークソングを良く聞いて育ったんですが、
中でも吉田拓郎さんが一番好きでして。

名曲がありすぎて一つには絞れないんですが、オススメの一曲の歌詞を考えていきたいと思います。

あくまでも僕個人の解釈なので。

大事な話が君にあるんだ 本など読まずに今聞いてくれ
ぼくたち何年つきあったろうか 最初に出逢った場所もここだね
感のするどい君だから 何を話すかわかっているね
傷つけあって生きるより なぐさめあって別れよう

だから
Bye-bye Love 外は白い雪の夜
Bye-bye Love 外は白い雪の夜

あなたが電話でこの店の名を 教えたときからわかっていたの
今夜で別れと知っていながら シャワーを浴びたの 哀しいでしょう
サヨナラの文字を作るのに 煙草何本並べればいい
せめて最後の一本を あなた 喫うまで居させてね

だけど
Bye-bye Love 外は白い雪の夜
Bye-bye Love 外は白い雪の夜

客さえまばらなテーブルの椅子 昔はあんなににぎわったのに
ぼくたち知らない人から見れば 仲のいい恋人みたいじゃないか
女はいつでもふた通りさ 男を縛る強い女と 男にすがる弱虫と
君は 両方だったよね

だけど
Bye-bye Love 外は白い雪の夜
Bye-bye Love 外は白い雪の夜

あなたの瞳に私が映る 涙で汚れてひどい顔でしょう
最後の最後の化粧するから 私を綺麗な想い出にして
席をたつのはあなたから 後姿見たいから
いつもあなたの影を踏み 歩いた癖が直らない

だけど
Bye-bye Love 外は白い雪の夜
Bye-bye Love 外は白い雪の夜

Bye-bye Love そして誰もいなくなった
Bye-bye Love そして誰もいなくなった


出典 外は白い雪の夜/松本隆

基本構成

この曲は「Bye-bye Love 外は白い雪の夜」までで一区切りとし、1〜4番のような構成です。

そして歌詞を読めばわかりますが、男女のかけ合いのように
1・3番が男性の心情やセリフ、2・4番が女性の心情やセリフ、となっています。

当時としてはこういう曲は珍しかったんじゃないかな?
だいたい男性目線の曲・女性目線の曲というように、どちらか一方だったりが多いです。

そんな中、男性と女性の会話や心理状態を交互に表したのは斬新だったでしょう。

現代ではこういうかけ合いの曲も多いですが
少ない言葉・文章でここまで情景を表現できている曲はなかなか無いと思います。

1番

大事な話が君にあるんだ 本など読まずに今聞いてくれ
ぼくたち何年つきあったろうか 最初に出逢った場所もここだね

いきなりの「what」です。

前回の『歌詞の意味を考える 〜「なごり雪」編〜』でも述べましたが、

whatとは何?どういうこと?とリスナーに考えさせること。

小室哲哉氏は「最初にwhatを持ってくることが大事」とおっしゃっています。

「大事な話」から始まれば「何、何?」となりますよね。
「君に大事な話が〜」ではなく「大事な話が君に〜」なんですよ。素晴らしい。

その「大事な話」を“今”聞いてほしいわけです。

数年つきあった男女。
大事な話となれば「結婚」か「別れ」ですね。

そして「最初に出逢った場所も〜」と過去を振り返っているところから、なんとなくイヤな予感がします。

感のするどい君だから 何を話すかわかっているね
傷つけあって生きるより なぐさめあって別れよう

「感のするどい君」というところ。
後々わかってきますが相手の女性の魅力を表しているんではないかと。

「傷つけあって〜」ここもまた素晴らしい。
互いに無理をしながら同じ時間を過ごすのではなく、互いのことを尊重しあって将来のためを想ってお別れしましょう、と。

ここから、相手のことを嫌って別れるのではないのだと推察できます。

だから Bye-bye Love 外は白い雪の夜

ここはストレートにバイバイラブです。一つの恋愛の終わり。
そして「外は白い雪の夜」。

“白”や“雪”というところが「リセット感」や「晴れ晴れとした気持ち」を思わせます。
同時に“雪”や“夜”というのは「冷たさ」や「さびしさ」、「辛い気持ち」も匂わせます。

2番

あなたが電話でこの店の名を 教えたときからわかっていたの
今夜で別れと知っていながら シャワーを浴びたの 哀しいでしょう

さっそく“感のするどい”ところが出ましたね。
男が電話で待ち合わせの場所、店の名を告げたときから女性は察知したわけです。

当時は携帯電話なんてありません。

男は、自宅または公衆電話から彼女の自宅に電話をかけます。
「あの店に来てほしい」と。

そして「別れ」を察知した彼女は、意味のないことかもしれないと思いながらシャワーを浴びるんです。

「意味のないことはわかっている、もう抱かれることもないとわかっている。それでもシャワーを浴びた私は憐れだよね」と。
切ない女心です。

サヨナラの文字を作るのに 煙草何本並べればいい
せめて最後の一本を あなた 喫うまで居させてね

男は煙草を吸う人のようです。当時はまぁ多かったでしょう。

「男なら煙草くらいあたりまえ」みたいな時代です。
現代とは違います。

サヨナラの文字を作るために煙草を並べる、といっても
実際に煙草を並べるわけではないでしょう。

何本使うねんって話です(笑)

ここは、名残惜しさの表現ではないかと。
比喩です。

1,2本ではすぐに終わるため、できるだけ長い時間一緒に居たいという彼女の気持ちの表れです。

だけど Bye-bye Love 外は白い雪の夜

再びバイバイラブ。
ところが1番とは違いますね。

1番の「だから」が「だけど」になっているんです。

1番は状況や理由の説明でした。
「僕たちこういう関係です」「こういう理由で別れます」
よって「だから」と続くわけですが、

2番は彼女の心情です。
「私はまだあなたに気持ちがあります」「別れたくないです」

でも別れることになるので「だけど」と続きます。

3番

客さえまばらなテーブルの椅子 昔はあんなににぎわったのに
ぼくたち知らない人から見れば 仲のいい恋人みたいじゃないか

再び男目線。

「客さえまばらな〜」はリアルに店の状況をさし、「寂しさ」「静けさ」を醸し出しています。
と同時に二人の、というより男の心情を表しているのでしょう。

「昔はあんなににぎわった」。恋愛の初期は二人とも盛り上がったのに今はもう違う。
心情の変化と時間の経過を表しています。

「ぼくたち知らない人から〜」で、パッと見は仲睦まじい恋人同士に見える。
冒頭でも述べましたが嫌いになって別れるわけではないので、傍目には良い雰囲気だということでしょう。

それだけ二人の関係・過ごした時間が良いものだったわけです。

女はいつでもふた通りさ 男を縛る強い女と 男にすがる弱虫と
君は 両方だったよね

ここで彼女の人間性みたいなものに触れます。

男はそれなりに恋愛経験が豊富なのでしょう。
「女はいつでもふた通り」と言い切ります。
強い女と弱虫。

ところが彼女はこの両方を持ち合わせている、と。
芯の強さと繊細さと、というところでしょうか。

「感のするどい君、察しのいい君」「強い面と弱い面の両方」こういったところから
男にとって彼女は「いい女」だったことがわかります。
できればお別れはしたくない。

そこで

だけど Bye-bye Love 外は白い雪の夜

「だけど」と続くわけです。
1番での男は「だからBye-bye」でしたね。

3番では「だけどBye-bye」にかわります。
この辺の描写もまた絶妙です。

4番

あなたの瞳に私が映る 涙で汚れてひどい顔でしょう
最後の最後の化粧するから 私を綺麗な想い出にして

再び彼女目線。

やはり彼女のほうが未練というか気持ちが残っている状態のようです。

最後だとわかっていながら化粧をする。
最後だとわかっていながらシャワーを浴びる。

このへんまでくるとわかってきますが、彼女は男をたてるというか。

まず「あなた」が先にきているんですよね。
「私が、私が」ではなく。

「あなたが電話で〜」や「あなたの瞳に〜」。
そして、煙草を吸うのも「あなた」ですね。

男が強く(?)、男が中心だった時代です。
彼女は決して出しゃばるタイプではなかったわけです。

現代の女性が出しゃばっているという意味じゃないからね!(笑)

席をたつのはあなたから 後姿見たいから
いつもあなたの影を踏み 歩いた癖が直らない

ここでも彼女の控えめなところが出ています。
一歩下がってついていく感じ。

最後の最後でもあなたから席を立って、と。
後ろ姿を見たい、と。

いつも影を踏みながら男についていったという、なにげない日常の姿から
彼女がいかに男を慕っていたかがわかります。

個人的に、この二行は堪らないです。

彼女の「切なさ」「控えめな態度」「男を慕っている様子」「今までの思い出」
様々な感情や情報が詰まっています。

だけど Bye-bye Love 外は白い雪の夜

「だけど」やっぱりお別れです。
そして

Bye-bye Love そして誰もいなくなった

に続きます。
男と女の別れ。

それぞれ席を立ち、それぞれの道へ進んでいき、
誰もいなくなった。

これは推理小説好きならピンとくるでしょう(笑)
ミステリーの女王、アガサ・クリスティの小説「そして誰もいなくなった」と全く同じですね。

ネタバレになるので詳しくは述べませんが、
誰もいなくなったあと、回想というか歌詞全体が映画を見ているような、第三者目線で展開されているような感じも含めて、小説の内容と似ているのかな、と。

まぁ、考えすぎか(笑)

最後に

前回の「なごり雪」もそうでしたが、昔の曲の歌詞のほうが情景が思い描きやすい気がします。

70年代の曲なので僕はもちろんリアルタイムではないんですが、なんとなく肌感覚でわかるというか。本質的なところが変わっていないんだろうな、っていうね。

最近の曲は、歌詞の内容がよくわからんわけですよ(笑)
曲によるけど。

少ない言葉、文章でどれだけ情景を描写できるか
これが個人的には良曲だと思っています。

「外は白い雪の夜」はまさにそんな曲でしょう★

コメント