歌詞を考える 〜「さそり座の女」編〜

今回の楽曲はかなりの知名度があるでしょう。

美川憲一さんの歌う「さそり座の女です。

1972年のリリース、作詞は斉藤律子さんという方ですね。

美川さんといえばこの「さそり座の女」を思いうかべる人がほとんどだと思いますが(僕もその一人だったけど)

実は、美川さんの最大のヒット曲ではありません。
売上枚数としては10万枚弱。

1968年リリースの「釧路の夜」は45万枚、1966年リリースの「柳ヶ瀬ブルース」は120万枚を超えており、「さそり座の女」の十倍以上です。

当時はレコードだし、現代より娯楽も少なく単純に数字だけで比較はできませんが。

ともあれ「さそり座の女」は美川さんのキャラクターも相まって強烈な印象ですよね。

この曲の歌詞を僕なりに解釈していきます。

ちなみに美川さんご自身はさそり座の女ではなく
おうし座のオカ・・男性です。

いいえ 私はさそり座の女
お気のすむまで 笑うがいいわ
あなたはあそびのつもりでも 地獄のはてまでついて行く
思いこんだら いのち いのち いのちがけよ
そうよ 私はさそり座の女
さそりの星は いちずな星よ

いいえ 私はさそり座の女
お気の毒さま 笑うがいいわ
女の心を知らないで だまして汚して傷つけた
ばかな男は あなた あなた あなたなのよ
そうよ 私はさそり座の女
さそりの毒は あとで効くのよ

紅茶が冷めるわ さあどうぞ それには毒など入れないわ
つよがり言っても おんな おんな おんななのよ
そうよ 私はさそり座の女
さそりの星は いちずな星よ

出典:さそり座の女 / 斉藤律子

構成

大きく1番と2番、そして3番が少しです。

これは不思議な曲で、わかりやすく「Aメロ」「Bメロ」「サビ」というような構成ではありません。
サビ・Aメロ・サビというべきか、Aメロ・サビ・Aメロというべきか。

「あなたはあそびのつもり〜」のメロディを
「いいえ私は〜」のメロディで挟んでいるような形です。

昔の歌謡曲って、こういう型にとらわれない曲が多い気がします。

ヒット曲って、コードとかメロディは計算されて作りこまれていることが多いけど
構成自体はけっこうシンプルだったりするんだよなぁ。

1番

いいえ 私はさそり座の女

個人的に一番センスを感じるのが、冒頭の「いいえ」です。
ここは凄いと思います。

仮に「私はさそり座の女〜」で始まるとしたらただの自己紹介なので
どういう状況かがわかりません。

しかし、この「いいえ」を入れることによって「会話をしている状況」が一気に見えてくるわけです。

しかも、いきなり否定から入ることによって一瞬緊張感を持たせることにもなります。

男女の会話————

星座に関する話題になり、おそらく男性の側から「◯◯座の女ってこうだよな〜、君は◯◯座だろ?」的な流れがあったんでしょう。

そこで、「いいえ」なわけです。

たった一言の効果が強烈です。

または「さそり座の女ってこうだよな〜」的なちょっと小バカにする前置きがあり、「君はまさかさそり座じゃないだろ?」という質問に対して「いいえ、私は(さっき小バカにした)さそり座の女よ」と。

次の

お気のすむまで笑うがいいわ

に続くことを考えると
「さそり座を笑う=小バカにする」流れがあったもの
と見るほうがわかりやすいです。

あなたは遊びのつもりでも、地獄の果てまでついて行く
思いこんだら いのち いのち いのちがけよ

怖すぎます。

遊びのつもりで女性にちょっかいかけることは危険ですよ。
僕も身につまされ、、、いやなんでもないよ。

もの凄い執念を感じますね。
女の情念です。

昔から、「幽霊=髪の長い女性」のイメージですが
やはり女性というのは生来、嫉妬深く執念深いんでしょう。

そうよ 私はさそり座の女
さそりの星は いちずな星よ

この「そうよ」にも何か強い意志を感じますね。
いちずなことは充分に伝わります(笑)

2番

いいえ 私はさそり座の女
お気の毒さま 笑うがいいわ

1番と同様に、どうぞ笑いなさいよっていう
ある種の開き直りだったり、上から目線な感じです。

気の強い女性だということがわかります。

女の心を知らないで だまして汚して傷つけた
ばかな男は あなた あなた あなたなのよ

はい、どストレートです。

この「女」は男にもてあそばれたんですね。

ストレートに相手をなじっています。ひどい言われようです。

しかしここで、若干の弱さというか脆さみたいなものを感じます。

辛い思いをさせられたから感情にまかせて思いの丈をぶつけているような。

ちょっと耐えきれなかった雰囲気です。

そうよ 私はさそり座の女
さそりの毒は あとで効くのよ

ここがまたなんともいえない恐怖心を感じます。

即効性があるのではなく「あとで効く」んですよ。
ジワジワやられる感じ。

ここにも執念じみたものを感じます。

さそりの毒=報復
と捉えることができますね。

この「女」は男に報復するんでしょうか。
するんだとしたらどんな報復なんでしょうか・・・

3番

そして3番はサビからです。

紅茶が冷めるわ さあどうぞ それには毒など入れないわ
つよがり言っても おんな おんな おんななのよ

まぁそれでもね、一度は惚れた相手ですから。
報復なんかするつもりは・・

いや、毒言うてるやん(笑)

毒を入れないなんてあえて言われるほうが逆に怖いです。

さぁどうぞ」というところから
自宅でおもてなしをしているんでしょうか。

それとも喫茶店で二人して紅茶を頼んだんでしょうか。
カフェじゃないよ、喫茶店だよ。

別れ話をしているのか、よりを戻そうとしているのか。
どちらにしても男と向き合って真剣に話をしているわけです。

ついにここで「女」の弱さが明確になりました。

いくら強がり言ったって私は女だもの
あなたがいないとダメなのよ、と。

おんな おんな おんな」と平仮名になっているのもいいですね。
柔らかさや脆さみたいなものを演出できます。

漢字で「女 女 女」だと、かたくなっちゃうからね。
このへんは日本語の素晴らしいところです。

そうよ 私はさそり座の女
さそりの星は いちずな星よ

最後は1番と同じ歌詞ですが、3番のこれは明らかに印象が違います。

1番は、否定やなじりがあることから執念を感じましたが
3番は、本音が見えたことで柔らかさみたいなものを感じます。

嘘偽りなくあなたに対して惚れています、という思い。
そしてこれからもあなたを慕います、と。

そんなイメージですね。

そもそも最初から
地獄の果てまでついて行く」と言っているあたり
男から離れる気は無いのが伺えます。

そして、最後まで見ると冒頭の「いいえ」の意味が違って見えてくるんだよね。

星座の話などではなく、男との関係を終わらせることに対して
「いいえ」なのかも。

男から別れ話を切り出された。
それに対して「女」は「いいえ」と否定する。

だって私は(一途な)さそり座の女だから。
(バカな私を)笑うがいいわ。

こういう解釈も面白いかもしれません。

最後に

いかがでしょう?

なかなか強烈な歌詞ですが、実は最後のほうで大団円?というか

恨みつらみから始まって、結局あなたのことが好きです的な収まり方をします。
ある種、純愛ですよ。

美川さんのキャラクターや歌詞の内容から
ネタにされやすいですが(主にコロッケ氏)

ちゃんと聞くといい楽曲なんですよね。
歌詞の内容も深いです。

紅茶でも飲みながら、じっくり聞いてみることをオススメします。

僕だったら出された紅茶は怖くて飲めません(笑)