みなさん、良くない環境で練習しているでしょう?
多くの人がメインの練習を自宅でやっているはずです。
家族がいたり、ペットがいたり。
壁が薄くて隣の物音が聞こえたり。
外部からの騒音があります。
楽器の音を邪魔しない環境がそもそも少ないんですが
さらに楽器自体の音作りや部屋の音響もまともじゃないことがほとんどです。
よって音響的によくない環境で練習するハメになります。
だからといって音響的に良すぎる環境で練習するのもよくありません。

良すぎる環境にもデメリットがあります。
どういうこと?
詳しく見ていきましょう。
日常の騒音
日常の生活音などは普段は気になりません。
でも楽器の音に集中しようとすると、それらの音は途端に気になりだします。
家族が出す物音
隣近所からの音
外のクラクション
緊急車両のサイレン(仕方ないけども・・)
どうかするとエアコンとか扇風機の音とかも気になります(笑)
ほとんどの人はそういった中で練習するのが当たり前になっており
雑音ありきで楽器の音を聞いています。
人間の耳は24時間ずっと音の情報を知覚しており
脳は必要な音情報だけを意識にのせる、なんて言われます。
ガヤガヤしている人混みを歩いていても
自分の名前を呼ばれたらすぐに反応できますよね?
ある程度は不要な音情報は排除できるんですが
音量がゼロになるわけではないので、やはり限界があります。
「楽器の音に色々な生活音がうっすらプラスされた音」
これがあなたが普段の練習中に聞いている音です。

楽器の音だけを聞いているわけではない
ということを覚えておいてください。
良い環境とは
音響的に良い環境とはどういう環境でしょう?
可能な限りノイズを排除し、音の反響もいい空間
と言えます。
しかし誰しもが実現できるものではありませんよね。
あくまで理想論です。
3つの要素を解説します。
ノイズその1
まずノイズ(雑音)が聞こえないこと。
前述した、生活音や外部からの音ですね。
一切のノイズを断とうと思ったら
とりあえず一般的な住宅環境では無理です。
まず自宅スタジオなり防音室を作って
本格的な防音対策をする必要があります。
地下とか母屋の離れとか。
ある程度家族がいる場所から離れた環境が理想ですが、
母屋の一室をスタジオに、とかだと
どうしても生活音の振動なんかは聞こえてきます。
子供が飛び跳ねるとか、ドアの開閉とかね。
相当な費用をかけない限り、理想的な対策は難しいでしょう。
ノイズその2
次に機材の電気信号的な意味でのノイズです。
ランダムノイズというやつですね。
一般的にはホワイトノイズ(サー、シャーという音)が知られていますが
ホワイトノイズはランダムノイズの一部です。
他にピンクノイズとかレッドノイズ、ブルーノイズとか色々ありますが
細かいことは気にしなくてOK。
このランダムノイズというのは
その全てをカットすることは原理的に不可能です。
なぜなら
電気回路である以上、絶対に発生するものだからです。
絶対零度の環境下ではランダムノイズが発生しないとかいう話なんですが
誰がそんな環境で音楽やるねん(笑)
水瓶座のカミュからオーロラエクスキューションかましてもらうしかありません。

反響
次に音の反響です。
プロの現場とかではね
最初から音響的なことも計算されて空間が作られています。
ですが、あくまで空間としての音響設計なので
室内にどんな機材をどんな風に配置するかによって音響はかなり変化します。
物を置けば置くほど
まぁだいたい悪い方向にいきます。
それでも一般の自宅よりは遙かに音の聞こえがいいです。
オーケストラ用のホールともなれば
相当緻密に計算されて
床や壁を始め、材質なども選びに選び抜かれています。
音源(スピーカー、アンプ等)から出た音の周波数が過干渉せず
クリアに聞こえるというのが理想ですが。
用途(スタジオ、ホール)や好みにもよるので
一概にどうとは言い難いです。
良い環境だと
上記で挙げたように、
- 生活音が限りなく無い
- ランダムノイズが少ない
- 反響がいい
という点を全てクリアしている環境を音響的に良い環境としましょう。
「こんな環境で練習できたらさぞかし心地いいんだろうな〜」
とあなたは考えるかもしれません。
僕はこんな環境では練習したくありません。
なぜなら音が綺麗すぎるからです。
音源制作をしているなら話は別ですよ。
作品を制作しているのではあれば
できるだけ良い環境で綺麗な音を重ねていったほうが
いい作品に仕上がります。
でも練習は別です。
練習の先には大抵の場合、本番(ライブ)があるからです。
プロとしてのライブなのか、アマチュアのライブなのか
通っている教室の発表会なのか。
人それぞれ形式は違うでしょうが、なんらかの形で本番を迎える人が多いでしょう。
やってみたらわかりますが
本番の音響環境は全然よくありません。
リハーサルもやってPAさんが色々と調整してくれますが
それでも本番で満足のいく状態にはほぼならないんです。
PAさんが悪いのではなく、本番という環境下に原因があります。
本番では観客が入り、それによって湿度や気温が変化します。
つまり音の反響・伝わり方が絶対に変わるんですよ。
これを計算して調整するのは、どんな凄腕PAさんでも不可能です。
同じライブハウス、同じPAさんでも
日によって全然違ってきます。
自分のギターの音が全然聞こえないとかザラです。
本番という環境下で音響が良くないことが多いのに
普段の練習をあまりにも聞こえのいい環境下でやっていたとしたら・・・
本番で焦ってしまって色々と対処できんでしょ。
音響環境が良すぎるという“レア”な状態に慣れてしまうこと自体がリスクなんです。
解決策
本番はトラブルがつきものです。
満足いく環境じゃないんだなと
普段から心構えがあれば大丈夫。
ではどうすればいいか?
「ステージ用の練習をしよう」でも書きましたが
本番の環境・状況を擬似的に作って慣れるというのが一番です。
あえて悪い状況に自分を追い込んで、それに慣れてしまいます。
なるべく静かな空間で
高価なヘッドホンをして
自分の楽器の音だけを聞く
のではなく、
あえてノイズ(生活音)の多い状態で練習をする。
なんなら自分の楽器の音が聞こえにくいくらいでも全然OKです。
最後に
注意点があります。
ここまで述べてきたことはあくまでデメリットであって
良い環境で練習するのがダメということではありません。
良い音・良い状態、がどんなものかを知っておくことは大事です。
必ず役にたちます。
良い状態がどんなかを知ってるうえで
「いざ本番となったらなかなか良い環境にはならないな」
という考え方ができるかどうか。
自分の音が聞こえにくい状態で
対処できるかどうか。
だから練習方法としては2つになるんです。
良い環境・良い音での練習(本来こういう音なんだー、という学びを得る)
悪い環境・聞こえにくい音での練習(本番の環境に対処するための経験を積む)
こういう練習を並行してやれれば
音作りや音の聞き方に関してはかなりのレベルになるでしょう。
問題は
どうやって良い環境を作るかなんだよなー(笑)
コメント