耳コピ・音感・落とし穴

今回は、音楽をやる上で重要な耳コピについてです。
「銃・病原菌・鉄」のようなタイトルになってしまいましたが(笑)

耳コピとは一般的には、“耳で聞いた音程を何の音程か当てる作業”という認識をされているでしょう。

耳コピをしたいけどできない
何から始めるのか、とっかかりがわからない
やってみたけど、合ってんの?
など、色々なお悩みがあると思います。

巷では耳コピの方法やコツなどを解説している動画や記事がたくさんありますが
根本的なところに触れていないものが多いようです。

耳コピとは音程を拾うだけではありません。

というわけで、状態別に解説してみたいと思います。

耳コピの手順


●確認 なにが必要か
●ステップ1 耳コピ完全初心者
●ステップ2 コードやスケールがわからない場合
●ステップ3 コードやスケールがわかっている場合

という具合に進みます。
全てのステップをふむ必要なはく、自分に当てはまるところから始めてOKです。
ただし、最初の「●確認~」はみなさん読んでください。

では見ていきましょう。

確認 なにが必要か

まずここが抜け落ちている人が多いのですが
そもそも耳コピに必要な能力を自分が持っているのか?
を考えたことのある人がどれほどいるでしょうか。

ほとんどいないでしょう(笑)

耳コピに必要な能力とは「相対音感です。

「絶対音感」なら聞いたことがあるという人もいるかと思います。
ある音(楽器や人の声、物音など)を聞いただけで何の音程かがわかる能力です。

それに対して相対音感とは、ある音aに対してbの音が“高いか低いかを比較できる”能力です。

耳コピには絶対にこの「相対音感」が必要です。

高いか低いかなんてそんなの誰だってわかるでしょー、と思うかもしれませんが
相対音感のない人はいらっしゃいます。稀ですが。

けっして聴力が悪いというわけではありません。

僕は過去にレッスンで、相対音感のない生徒さんの対応をしたことがあります。

相対音感がないと、問題なのは耳コピだけではありません。
“高いか低いか”がわからないどころか、“心地良い響きか気持ち悪い響きか”もわからないわけです。

レッスンでは間違ってもいいんですよ。
目の前に僕がいますから。

でも、一人だと間違ったことに気が付きません。
コードを変な押さえ方をして気持ち悪い響きになっていたとしても気が付きません。

つまり、相対音感がない人は自宅での練習が成立しないのです。

まずは自分に相対音感があるかないかを確認しましょう。

難しく考える必要はありません。
音を2つ鳴らしてどっちが高いか低いかがわかればOKです。
耳コピの最初の課題はクリアしています。

高いか低いかわからない。
相対音感のない人はまずここをクリアしてください。

音感は「記憶」です。

絶対音感の訓練は幼少期にひたすら単音やコードを鳴らして聞いてそれを覚えていきます。
音を2つ鳴らしてこっちが高いんだな低いんだなと記憶させましょう。

色々な音程でやるのではなく、まずは固定してください。
鍵盤のドとレだけ、とか。ギターの6弦開放と5弦開放だけ、とか。

時間のかかる作業ですが、粘り強く訓練すればわかるようになってくるはずです。

ステップ1 耳コピ完全初心者

相対音感のある人は早速ですが耳コピをやってみましょう。

歌のメロディや主旋律を拾っていきます。イントロの印象的なフレーズなどでも良いです。
とにかく耳に残りやすいところ、聞き取りやすいところに集中します。

フレーズ全体を拾うことはいきなりは無理でしょう。
まずはごく一部です。一音でもOKです。

ある音aを聞いたあと、とりあえず当てずっぽうで楽器の音bを鳴らしましょう。
かなりの確率で外れますよね(笑)

ここから最初に自分が鳴らした音bをズラしていきます。aに当たるまで。
これだけです。

一つ注意ですが、bをズラす幅を最小限つまり“半音”ずつにしてください。
鍵盤でドを鳴らしたのなら、まずド#かシに。ギターで6弦5Fを鳴らしたのなら、まず4Fか6Fに。

こうすることで着実に狙う音aに近づいていきます
ドからファとか、5Fから9Fなど、ズラす幅が広いといつまでたっても当たりません。

とにかく集中しましょう。
相対音感があるのであれば、聞いた音aと鳴らした音bが一致したときにピンとくるはずです。

一音でもコピーできたら、あなたは耳コピができるということです。
あとはその作業を繰り返して、一音→フレーズ→一曲という具合に拡張していけるようになります。

一致してもピンとこない、または一致している気がするけど不安、という人は

①誰かに楽器の音aを鳴らしてもらいスマホなどで録音しましょう。
このとき相手が弾くところは見ないようにしておきます。そして録音した音aを聞きながら、自分でも音bを鳴らして当てにいきます。正解の音aは相手がわかっているので、当たりか外れかをジャッジしてもらってください。

②誰も協力者がいない場合は、目をつぶって自分で適当に音aを鳴らす姿をスマホのムービーで撮影しましょう。
撮影した映像は見ずに音aだけを聞いて、自分で音bを鳴らして当てにいきます。あとで映像を確認すれば当たりか外れかがわかります。

ステップ2 コードやスケールがわからない場合

一つの音をコピーするのはわりとできる、でもコードやスケールはわからない。
という場合、どうするか。

現状のままでも一曲コピーすることは不可能ではありません。
めちゃくちゃ時間かかるけど。

耳コピを素早くできるようになるには耳の訓練に加えて、コードやスケールの知識が必要です。
コードやスケールは耳コピを進めていくうえでの手がかりになるからです。

とりあえず、低音を聞きましょう。
バンドものならベースの音。ピアノやアコギの弾き語りものならその低音。できるだけ低い音に集中してください。

低い音はコードのルート(根音)といって一番大事な音だからです。
このルートだけを拾っていっても曲にはなります。味気ないですが、一応は成立するんです。

コードの知識があればルートが把握できた時点ですぐにコード全体が見えてきます。
知識がなければルートのみです。

しかし、知識がなくてもコードをつけることは可能です。それが何というコード名かはわからないとしても。

ルートを拾いコードをつけるには、心地良い音を当てはめていきます。

ある曲のある部分のルートがソ(G)の音だったとします。
そのGが鳴っている間、適当に音を当てはめるんです。なんでもいいですよ。

そうするとうまく当てはまる、つまり心地良い音と、当てはまらない音とが出てきます。
当てはまるなー、心地よいなー、と思う音をピックアップして並べてみるとコードができあがります

正確(アーティスト本人が弾いているコードや、教本などに書いてあるコードという意味)ではないかもしれませんが、それでOKです。

なぜならコードとは“解釈”だからです。正解なんて無いようなもん。
解釈次第でどうとでもなります。(コードは解釈

ステップ2の時点では、ここまでできれば大成功でしょう。
正確なコピーをするのであれば知識が必要になってきます。同時進行でコードやスケールの勉強もしましょう。

ステップ3 コードやスケールがわかっている場合

コードやスケールの知識がそこそこある、という人はもう大丈夫でしょう。

聞いた音(ルート)をいくつか繋げていくとコード進行が見え、曲のキーが把握できます。

ダイアトニックコード内やスケールから判断できないなぁ、というときは
部分転調だとか4度進行だとかモーダルインターチェンジだとか、ありとあらゆる知識を総動員してコピーしていきます。

耳だけでも可能ですが、やはり知識があったほうが早く正解に到達できます。
知識面を更に深めていってください。

知識が増えれば増えるほど自分の中の手がかりが増え、耳コピが楽になっていきます。

最後に

耳コピを極め、知識も充分に増えるとどうなるのか。
初めて聞く曲でも、いきなり合わせて弾けるようになります。(よほど複雑な展開の曲じゃないかぎり)

生徒さんにもよく聞かれます。
「なんで初めてなのに合わせられるんですか?」と。

できない人には不思議な現象に見えるんでしょうねー(笑)
これはもう訓練のたまものと言うしかないです。

コードやスケール、キーなどの知識があると、次にくるコードを絞ることができます。
完全に一つに絞ることは不可能ですが、沢山ある中でも二つ三つくらいまでは絞れます。

そうやって頭の中で選択肢を狭めておいて、次のコードが鳴った瞬間に“反応”するのです。

コード進行は定番というかセオリーのようなものがあります。
つまり、ある程度の枠内・制限内で作られています。

そして時々、その枠から大きく外れて作られる曲もあります。(上記の、複雑な展開の曲)

いわゆるコルトレーンチェンジというか、マルチトニックシステムなやつです。
この場合、初見(聞?)で合わせるのはどんなプロでも無理です。

一般的な曲であれば、最終的には初見で反応できるようになります。
そういうレベルを目指して頑張りましょう。

今回は“音程を拾う”という意味での耳コピの解説をしましたが、

個人的には
強弱、ニュアンス(スライド、プリングなど)、音色、などのコピーも含めて「耳コピ」
だと思っています。

うまい人の演奏を徹底的に、可能なかぎり細かいニュアンスまでコピーすることで
自身の演奏が向上します。

ただし、それはモノマネにすぎません。

ここからが大変なんだな(笑)

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