速弾きは音楽か?

はい、もう色々なところからツッコミがきそうなタイトルですが(笑)

結論からいきましょう。
楽曲として成立しているか?といわれれば「YES」ですが
文字どおり音を楽しめるか?といわれれば「NO」でしょう。

ここでいう「音を楽しむ」というのは楽曲全体のことではなく
速弾きの“フレーズ自体”です。
楽しむ=フレーズをしっかり聞き取れるかどうか、という点で。

速弾きというよりは
“速すぎる弾き“かな。

詳しくみていきましょう。

速弾きとは

一般的に速弾きといえば、エレキギターのソロを指します。
テンポの速い曲で16分音符や3連符〜5連符、場合によっては7連符などのフレーズを
ものすごく速く弾く。まくしたてるように。

スムーズな運指、ピッキング
見ていて非常に気持ちが良いです。

代表的なプレイヤーでいうと
Yngwie Malmsteen(イングウェイ・マルムスティーン)
Paul Gilbert(ポール・ギルバート)
Chris Impellitteri(クリス・インペリテリ)
そして僕の好きな、Michael Romeo(マイケル・ロメオ)
あたりでしょうか。

速弾きは、BPMという指標で表わされます。
BPMとは 「Beats Per Minute」 の略で
1分間にどれくらいの音(4分音符)を刻むのかという音楽用語です。
心拍数を表す医学用語でもありますね。

そしてビジネスマンならBusiness Process Managementの方を思い浮かべる人もいるでしょう。
関係ないよ(笑)

1分間にどれだけ音を刻むのか、ということで
時計の秒針をイメージしましょう。
あれは1分間に60回動きますね。
つまり時計の秒針は「BPM=60」と言えます。

BPMは一般的に4分音符が基準となっているので
BPM=60は4分音符なら60回ですが
8分音符なら倍の120回、16分音符なら更に倍の240回となります。

3連符だと180回で、6連符だと360回です。

フレーズとしては3連符や6連符はたくさんありますが計算が面倒なので
ここから先は16分音符のみで考えます(笑)

さて、BPM=60だと16分音符240回でしたが
BPM=120だと16分音符480回となります。
このあたりから感覚的にキツくなってくる人が多いんじゃないかな?

もちろんギター初心者はゆっくりなテンポでも16分音符で弾くのは難しいでしょう。
ある程度弾ける人で速弾きをやろうとするならば
だいたいBPM=120前後が最初の壁だと思います。
次がBPM=170前後くらいかな。次に200。
それ以上はギネスとかの世界になるのであんまり必要ないです(笑)

ちなみに「BPMいくつ以上で速弾き」というような定義は存在しません。
というか、「速弾き」というものも存在しません。相対的な感覚にすぎないので。
何をもって速いのか遅いのか、というのは人によって違うからね。
亀から見たらウサギは速いけど、チーターから見たらウサギは速くないってのと同じです。

でも、これ言っちゃうと話が進まないので(笑)
便宜的に速弾きは「16分音符でBPM=120以上」とします。

音楽は何を楽しむのか

さて、音楽というものは何を楽しむものでしょう?

歌があるもの
歌のないインストゥルメンタル
打楽器だけもの

音楽と言っても色々ありますが、大きく分けるとこんな感じです。
そして、これらは全て共通点があります。

それは「変化」です。
音楽とは変化を楽しむものなんです。

歌があればメロディが変化し、歌詞が変化し、コードが変化し
インストゥルメンタルでもやはりメロディ(主旋律)があるものが多く、ないとしても
コードが変化していきます。
打楽器だけというのはアフリカの方に多いですが
ひたすらビートを刻み、それに合わせてダンスを楽しみます。
ずっと同じパターンで叩いているわけではなく、やはりリズムが変化していきます。

どういう音楽であれずっと何も変化しないということはないんです。

一つのコード、一つの音だけがずっと鳴っていてもつまらないからね(笑)
ま、探せばそういうマニアックなものもあるだろうけど。

変化を楽しむということは
どう変化したか”がある程度しっかり知覚できるということです。

ここでは、「便宜上速弾きはBPM=120以上とする」 と前述しました。

これは、弾く作業が一般的にやや辛くなり始めるテンポで
聞きとるのは余裕です。

聞きとるのが難しくなるのがだいたいBPM=170前後でしょう。
速弾きが得意な人にとっては大したことないテンポですが
一般的にはこのあたりから「どう弾いているんだろう」となります。

BPM=200くらいになると、もはや音の上下(音程の上がり下がり)くらいしか
わからなくなる人が多くなってきます。
BPM=240以上とかになると、もう何が何やら。
映像で見ても ♪目にもとまらぬ早業で〜♪ と忍者ハットリくん状態です(笑)

参考までに。
速弾きのギネス記録を更新した経験をもつ
ブラジル出身のTiago Della Vega(チアゴ・デラ・ヴェガ)氏です。

こうなると変化がハッキリとはわかりません。
変化していることはわかっても、どう変化しているかが人によっては全くわからないわけです。

これって音楽といえるの?(笑)
繰り返しますが、音の変化を楽しむという観点で音楽ですか?って話だよ。

ドラマや映画で
役者が何と言っているかわからないくらい早口でセリフを言ったとしたら
ストーリーが全然楽しめないわけです。

え?
好きな俳優が出ているだけで楽しめるって?

そういう人もいるでしょう。
速弾きも同じで、「なんかよくわからんけど凄いことやってるからいいやん!」
って楽しみ方ができる人はそれでOKなんですよ。
でも、ちゃんと聞きたい・聞きとりたいって人にとっては
速すぎるともはや音楽ではないわけです。

変化は音程だけではない

速いと音程の変化が聞きとれなくなります。
そしてもう一つ聞きとれなくなるのがダイナミクス、つまり「抑揚」です。

抑揚とは、音量(大小)や音色(ニュアンス)の変化のことです。
抑揚をつけることで感動する歌や演奏になります。

いくら音程やリズムが完璧でも、一本調子で歌っていたら感動しませんよね?
速すぎる演奏はここが聞きとれなくなるんです。

というか、これはプレイヤー側の問題です。
速く弾くために、いろんなものを犠牲にしてスピード重視になります。
抑揚をつけている暇がないんです。
プレイヤーのテクニックとかではなく、スピードを上げれば上げるほど
抑揚をつけることは物理的に不可能になっていきます。
どんな人でもです。

役者がセリフを言うときは感情をこめます。ダイコンもいるけどね(笑)
感情をこめず(抑揚をつけず)早口でセリフをまくしたてても、やっぱり楽しめません。
速弾きがやっていることはこれと同じです。

最後に

ここまでいろいろ書きましたが、速弾きを批判するつもりはありません。
前述のとおり、楽曲としては成立しているわけだし
何をやっているかわからなくても、雰囲気だけで楽しめる人も多いでしょう。

何より見た目のインパクトは凄いです。
そして速弾きは、相当な練習を積まないとその境地には到達できないんです。
その努力は本当に素晴らしい。

しかし!

音楽である以上、音の変化を楽しむもの

という持論はゆずれないんだな(笑)

というわけで
音楽は「耳」で。
速弾き、いや速すぎる弾きは「目」で楽しみましょう★