先日、凄く寒い日がありました。
気がつくと教室のギターのピッチ(音程)が上がっていたんです。つまりネックが逆反りしたわけですね。
2本がガッツリ、1本が少しでした。
何か外的要因で変化が起こる場合は、弦が引っ張っているぶん順反り方向に行きやすいはずなんです。
もちろん調整方法にもよりますが。
それが逆反りしていたもんでちょっと驚きました。
今回はネックの反りについて解説します。
順反り・逆反り
ギターやベースのネックの反り方にはいくつかのパターンがあります。
これはあくまでも大まかな分別で、実際には複数のパターンの複合でネックの状態が悪くなることも多く
複雑になればなるほど自分でメンテナンスするのは困難になっていきます。
順反り
ギターの前面方向に曲がるのが順反りといいます。

図は極端に曲がっていますが、ここまで曲がることはまずありません(笑)
順反りの状態だと弦高が高くなります。一般的にはハイポジションあたりです。
もちろん順反りといっても色々な順反りの状態があるので一概には言えませんが。
一般的には「やや順反り」の状態にセッティングするのが良いとされていますね。
まぁ、好みですけど。
順反りだとサウンドはローが出る傾向にあります。
逆反り
順反りとは逆に、ギターの背面方向に曲がるのが逆反りです。
これまた逆に、弦高が低くなります。一般的にはローポジションあたりで。
弦高が高いと押さえにくいという弊害がありますが、低いと音詰まりやビビリが起こります。
ビビリというのは押さえているフレットよりもハイポジション側が高いことで弦がうまく振動できず音がビリビリ鳴ることです。
逆反りだとサウンドはハイが出る傾向にあります。
波打ち・ねじれ
順反りと逆反りはわりと大きなカーブだったりしますが、短いスパンで順反りと逆反りを繰り返すと波打ち状態になります。
さらに横方向に力が加わるとねじれの状態を引き起こします。
こうなると余程の腕がない限り自分でメンテナンスは無理です。
潔くプロのリペアマンに頼みましょう(笑)
なぜ反るのか
ギターやベースのネックは木でできています。というか、ネックに限らず全体のほとんどが木です。
そしてある程度の価格帯のものになればシーズニングといって制作前の段階で木材を充分に乾燥させています。もう、数年単位とかで。
しかし、それでも木である以上、温度や湿度の影響をうけます。
木自体が含んでいる僅かな水分などのせいで体積が膨張・収縮するからです。
変化自体は、温度によるものはほとんど無視できるらしいのですが、湿度による影響はモロに出るとか。
冒頭「寒い日が〜」と述べましたが、寒さという温度自体が強く影響したというより、寒くて湿度が上がったことが強く影響したんだと考えられます。
空気中の水分量が一定なら温度が上がるほど湿度は下がり、温度が下がるほど湿度は上がるからです。
ちなみに前にお世話になったリペアマンの方に聞いた話ですが
屋久島(鹿児島)に住んでいる知人がアコギを倉庫に数年保管していたところ
一切力を加えていないのにバラバラになっていたんだとか(笑)
屋久島は湿度が80%とか90%とか年間通して非常に高く、湿度の影響で
木材の膨張や接着剤の剥離が起こり、原型を留められなくなったらしいです。
それくらい湿度の影響は凄まじいんだという一例です。
ネック反りの予防
ネックの反りを100%予防することは不可能です。
が、日常的に色々気をつけることである程度なら反りを軽減できます。
湿度管理
まずは湿度管理です。
ギターやベースに最適な湿度は40〜60%と言われています。
加湿器と除湿器を併用するのは現実的ではないので、手っ取り早く楽器用の湿度調整剤を利用しましょう。
これは湿度が高いときには吸湿、湿度が低いときには放湿するという優れものです。
あとは湿度計を楽器の近くに置いてときどき気にするくらいで充分でしょう。
置き方
湿度だけではなく、物理的に力が加われば当然ネックに影響が出ます。
つまりギターやベースをどう置くかが大事です。
ポイントはネックが曲がる・歪む方向に力が加わるかどうかを考えること。
一番良いのはヘッドで引っ掛けて吊り下げる保管方法。ショップ等でよくある光景ですね。
またはケースに入れて平置きが良いです。

ギタースタンドはまぁまぁといったところでしょう。ネックで寄りかかるため負荷がかかります。


ただしボディだけが接するこのタイプはアリですね。

一番良くないのは直接壁に立てかける方法。これはもう最悪です。
やっている人はいますぐやめましょう。

知人の持っているSGはこれでネックが折れました(笑)
セットネックだったのもあるかもしらんけど。
保管の方法も大事ですが、単純に取り扱い方法も大事です。
スタンドなどからギターを手にとる場合、ネックだけをもって方向転換(身体の近くまで持っていく)し、ストラップを掛けたりしていませんか?
この動作でもネックにかなり負荷がかかります。
スタンドから真上に持ち上げたら、できるだけボディを持って方向転換するようにしましょう。
反ったらどうするか?
いくら普段から湿度や保管・取り扱いに注意を払っていてもね
やっぱり反るもんは反ります(笑)
んじゃ、反ったらどうすんの?
もちろん直せますよ。
ただし、自分でできるのはある程度までと考えておきましょう。
前述しましたが、状態が悪いとプロに頼むしかありません。
反ったときの対処法は次の「ネックの調整方法」で紹介します★