ハンマリングとプリングのコツ

ギターを弾く上で欠かせないのがハンマリングプリングという奏法でしょう。
エレキでもアコギでもよく使うテクニックです。

ところがハンマリング&プリング自体に注意がいって、そのあとの動きが疎かになっている人がかなり多いです。
結果、フレーズが繋がらないので「ハンマリング&プリングができない・苦手」となります。

ハンマリング&プリングで大事なのは、終わった後の動きです。

ハンマリングとは

ハンマリングとはフレットを押さえ(または開放弦)、そこよりも高音のフレットに対し指を叩きつけて音を出す奏法です。ピッキングは最初に押さえていたフレットのみです。
1回のピッキングで音程を上げる奏法と言えます。

ハンマリング1
ハンマリング2

ハンマー(hammer)で叩きつけるようなところからこの名がついています。ちなみに英語圏ではhammer onと言い、ハンマリングは通じません(笑)

プリングとは

プリングはハンマリングとは逆の動きで、
低音フレットにあらかじめ指を置いておき(または開放弦)、そこよりも高音フレットでピッキングし、押さえていた指を引っ掻くようにして音を出す奏法です。
1回のピッキングで音程を下げる奏法と言えます。

プリング1
プリング2

英語圏ではpull offと言います。

ハンマリング&プリングの役割

ハンマリング&プリングそれぞれの奏法がわかったところで、役割を考えましょう。
当然、メリットもデメリットもあります。

メリットその1:レガートにできる

レガートというのは音を滑らかに繋いでいく奏法です。ピアノなどの鍵盤楽器が得意とする奏法ですね。
なぜかというと、鍵盤は構造上同時に複数の音を出すことが可能なため、例えばドレミと弾くときにドが途切れる前にレをタッチし、レが途切れる前にミをタッチすることができるからです。
つまり音の切れ目を無くすことができるということ。

これに対し、ギターは同弦上では同時に複数の音を出すことが不可能。つまり次の音を出した瞬間に前の音は消えているわけです。ここで滑らかさが失われます。
さらにフルピッキング(全てピッキングすること)をして弾くと、どうしても全ての音にピックのアタック音が乗っかるためここでも滑らかさが出せません。

ハンマリングやプリングをすることでピックのアタック音を減らし、滑らかにフレーズを弾くことができます。

メリットその2:ピッキングの効率化を図れる

ハンマリング&プリングはピッキングの回数を減らせます。フレーズによっては連続でハンマリング&プリングを繰り返すものもありますが、それでもフルピッキングするよりは確実に減ります。

数を減らせるぶん右手の負担も減るし、数が減るということは辻褄合わせがしやすいということになります。
ギターはほとんどのフレーズが弦移動を含むフレーズです。この弦移動には4つのパターンが存在します。

  • ダウンで終わり、次に進む弦が上(アップ方向)の弦
  • ダウンで終わり、次に進む弦が下(ダウン方向)の弦
  • アップで終わり、次に進む弦が上(アップ方向)の弦
  • アップで終わり、次に進む弦が下(ダウン方向)の弦

あらゆるフレーズの弦移動はこのパターンのいずれかになり、テンポが速いまたは苦手なパターンがあるとピッキングがスムーズにいかなくなります。
そこでハンマリング&プリングの登場です。

例えばアップで終わり次に進む弦が下のパターンが苦手なら、最初に弾いている弦をダウンで終わるようにハンマリングまたはプリングで辻褄を合わせ、次の弦へ移動させることでスムーズになります。
最初に弾く弦を2音、ダウン・アップで弾いて次に下の弦に進むなら
最初に弾く弦を1回だけのピッキングにし(2音目をハンマリングorプリングで出す)、次の弦へ進むわけです。

速弾き信者のメタラーの中にはフルピッキングこそ正義と思っている人がいますが(笑)

効率良く滑らかに弾けるならハンマリング&プリングを駆使してもいいんです。
もちろん、フルピッキングの技術はそれはそれで凄いけどね。

ちなみに超絶技巧で有名なAl Di Meola(アル・ディ・メオラ)氏もハンマリング&プリング否定派です。なんでやねん(笑)

アル・ディ・メオラ

デメリットその1:音量が下がる

ハンマリング&プリングはピックではなく左手の指で出す音です。
当然、ピックで弾いたときよりも音量が下がります。

その僅かな音量の下がり具合がフレーズ全体の音量をまろやかにし、レガートにもなるんですが。慣れないうちは極端に音量が下がってしまい、何を弾いているかわからないという状態になります。

デメリットその2:リズムが安定しない

ハンマリングは叩きつける動作。プリングは引っ掻く動作。
普通にピッキングするときの指の動作とは僅かに違いますが、その僅かに違うことをやるという意識が強すぎると力みが生じ、リズムが不安定になります。

特にプリングの際に力んでいると弦と指との摩擦が大きくなり、自分が思ったタイミングよりも遅くなります。これを繰り返すとフレーズ全体がグダグダになってしまうんです。

右手を使う(ピッキングしている)と安定して弾ける、または安定しているように聞こえても
左手だけになると途端にリズムが不安定になる人がいます。
そういう人は、左手だけでしっかりリズムをキープできるようにする必要があります。

ハンマリング&プリングの落とし穴

さて、ここまではハンマリング&プリング自体に注目してきました。
前述したように、ハンマリング&プリングはその後の動きが非常に大事です。
次へと繋がらなければせっかく効率化した意味がありません。

それぞれの陥りやすいポイントを見ていきます。

ハンマリングの落とし穴

ハンマリングは任意のフレットに指を置き、そこよりも高音のフレットに指を叩きつけて音を出します。
このときにほとんどの人は叩きつけた指にしか意識がいきません。

元々置いていた指は?
どうなっていますか?

高音フレットに指を追加したあとも元々の指がフレット上に残っているとしたら不正解です。

ハンマリング1
ハンマリング3

このように元々置いていた指(人差し指)は離すほうが良いです。

基本的にフレットに置いている指の数を増やすほど力みが加算されていきます。置く指を減らすことで力みを無くし、スムーズに移動させることができます。

プリングの落とし穴

プリングは任意のフレットを弾いたあと引っ掻くように指を離し、そこよりも低音のフレットの音を出します。
このときにほとんどの人は残している指にしか意識がいきません。

引っ掻くように離した指は?
どっちを向いていますか?

フレーズにもよりますが、プリングした弦よりも下(高音弦)に次の目標があるのなら特に問題にはなりません。
プリングした弦よりも上(低音弦)に向かうときは要注意です。

なぜならプリングという動作自体が、指先を下(高音弦)に向ける動作だからです。
プリングした時点で指先は必ず下(高音弦)を向いているわけです。

プリングの悪い例

このように引っ掻きすぎて指板から大きく離れたら最悪です。(薬指)

プリングの性質上、下(高音弦)に向かう場合はスムーズに弾けますが上(低音弦)に向かうとするといつも以上に素早く指を動かす必要が出てきます。
同じリズムでも指の動かし方(スピード)が変わるということです。

ここに気がついていない人が多い。

プリングの後がつながらないという人は次の目標フレットが弾いた弦の上下どっちなのか、を考え指の動かし方を意識しましょう。

そもそもの動き

わかりやすく解説するためにプリングはあらかじめ指を置いておく形をとりましたが
実はこれやめたほうがいいです(笑)

プリング3
プリング4

このように低音側のフレットはプリングする直前に指を置くようにしましょう。
ハンマリングの落とし穴で書いたことと同じですね。
一つはできるだけ力みをなくすこと。もう一つは次のフレーズへ繋ぎやすくすること。

ハンマリングした瞬間に元の指を離さなれければ、その間は指が二本着地していることになります。
プリングの際にあらかじめ指を置いておくならば、指が二本着地した状態でスタートすることになります。

コードなど複数の弦を同時に押さえるときは別として、単音でフレーズを弾くとなるとできるだけ指板上に複数の指が残っていないほうが得策です。もちろんフレーズにもよるんだけど。

例えばこういうフレーズ。
ハンマリングしたあと元の指(人差し指)を残しているとしたら、次の弦への移動がぎこちなくなります。

ハンマリングのフレーズ

プリングだとこういうフレーズ。あらかじめ人差し指を置いておくとしたら、薬指や小指を次の弦へ移動させた瞬間には人差し指も同じ弦へ着地させなければなりません。こちらもぎこちなくなります。

プリングのフレーズ

最後に

ハンマリング&プリングが特殊な動きだと思っている人も多いでしょうが、通常のフレーズを弾く動きとほぼ変わりません。ほんの僅かに指を置く&離すタイミングを変えるだけです。

古い教本なんかにはハンマリングでは指を置きっぱなし、プリングではあらかじめ指をセット、って書いてあります。
確かに昔はそれでもよかったんですよ。フレーズが単純だったしバリエーションも少なかったからね。

しかし時代をおうごとにフレーズも進化し、従来のハンマリング&プリングのやり方では通用しなくなってきました。

というわけで、基本的に指は複数置かないことを意識してハンマリング&プリングの練習をしましょう★

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