ブルースを弾けますか?
ジャズを弾けますか?
あなたが弾いているブルースは
エセブルースじゃないの?
ジャズもどきじゃないの?
音楽には色々なジャンルがありますが
ブルースっぽいとか
ジャズっぽいとか、
そういった表面的なところにとらわれていると痛い目にあいます。
大事なことがすっぽ抜けているからです。
大事なこととは、文化とマインドです。
詳しく見ていきます。
ジャンルって
ジャンルってなんでしょう。
ジャンル=genre
分類項目、種類、といった意味です。
フランス語ですね。
音楽ジャンルといえば
ブルース
ロック
ジャズ
クラシック
R&B
HIP HOP
POPS
など様々あります。
んで、ギター界隈でよく言われるのが
ブルースギターとか
ジャズギターです。
クラシックギターはちょっと毛色が違うというか
独自なものなので。
このへんは
やっている人にしかわからない棲み分けがあります(笑)
僕は以前から、このジャンル分けに疑問を持っています。
だって明確な定義と線引きがないから。
音楽だけに限ったことではないでしょうが。
和食と洋食の明確な定義って無いでしょ?
ホラーとサスペンスの明確な線引きって無いでしょ?
ここまでがブルース、とか
ここからロック、なんてことは言えないわけです。
ジャンルって
ある程度こんな雰囲気だよー、って解釈
だと思うんですが、
なぜか頑なに
「それはブルースじゃない」とか
「R&Bってこうだから」みたいに
線引きをしたがる人が一部います。
なぜジャンルわけをするのか
音楽に限らず、人間はなんでジャンルわけをするんでしょうか?
どこかの記事でも書いたけど、
言葉というのは区別する必要性を感じたときに発生するそうで。
つまりAとBは違うものだ、区別しなきゃってなったときに
初めて「A」と「B」にそれぞれ別の呼び名が与えられるんです。
日本語では「蝶」と「蛾」は別の言葉ですが
フランス語では蝶と蛾の区別はなく一つの言葉です。
つまり
区別する必要があると感じる人たちと
区別する必要がないと感じる人たちとがいるということ。

そこには文化的・歴史的な背景があります。
音楽ジャンルに関しては、そこまで細かくジャンル分けする必要があるかね?
と個人的には思います。
先にも述べたように明確な定義・線引きができないから。
まぁ、混乱をさけるために
大まかな音楽の方向性・特徴みたいなものを示すのに必要なのかもしれませんが、
細かく分けすぎることで逆に混乱をきたしているのではないか、とも思います。
商業的な意味もあるんだろうけどね。
今までにないようなミュージシャンが出てくると
より個性とかオリジナリティを強調し、“箔”をつけたほうが売れるんでしょう。
「新しいジャンルのパイオニアだ!」的な。
◯◯っぽさはどこからくるか
では、ジャンル分けしたとして
そのジャンルを匂わせる「◯◯っぽさ」ってどこからくるんでしょう?
一般的には
リズム、コード、フレーズ(スケール)です。
全てが揃う必要はありません。
テンションコード入れまくったらそれだけでジャズっぽく聞こえるし
ボサノバやサンバなどはリズムだけ聞いてもピンときます。
演歌っぽい、沖縄っぽいなんかも
フレーズだけで雰囲気を醸し出せます。
はい、これが落とし穴です(笑)
一般的には、と書きました。
確かにリズムやフレーズなどで雰囲気を出せるんですよ。
教則本や多くのレッスンでは
「ブルースはこういうフレーズを弾こう」
「ジャズはこういう伴奏をしよう」
と勧められます。
その通りに弾けばそれっぽくなります。
そこまでです。
“それっぽい雰囲気”止まり。
ブルースっぽく弾けている、ジャズっぽく弾けているだけで
ブルースが弾けている、ジャズが弾けている、わけではないんです。
ほとんどの人がね。
おそらく僕もです。
リズムやフレーズを真似ても、所詮上っ面でしかありません。
どうするか
大事なことは文化とマインド、と冒頭で書きました。
◯◯っぽさが出せる弾き方、つまりリズムやフレーズを真似る、では
本質というかそのジャンルのコアな部分、真髄みたいなところには辿りつけません。
語学で考えるとわかりやすいです。
世の中には英語がペラペラの人がいますが
英語がペラペラの人には2種類います。
英語圏の文化を知り、マインド(考え方や価値観)などもわかっている人と
ただ単に単語の意味や文法を熟知しているだけの人です。
単語の意味や文法だけ理解したところで
例えばアメリカの歴史や文化、価値観などが理解できますか?
できませんよね。
リズムやフレーズだけを真似るのは、単語や文法だけを学ぶのと同じです。
必要ではあるが不十分、という状態です。
ブルースというのは
19世紀後半、アメリカ南部の黒人たちから発生したものです。
その名の通りblue(悲しみ・憂鬱)に始まり、白人社会や人種差別への反抗、また過酷な労働への不満など、ありとあらゆる感情を含んで表現されています。
辛い日常があって、それを憂う気持ちだったり
なんとかそこから脱却しようとする反骨精神だったり。
そういった、決して“ハッピーではない感情”の塊みたいなものがブルースです。
ジャズというのは
19世紀末〜20世紀初頭、同じくアメリカはルイジアナ州ニューオーリンズの黒人たちによって誕生し、ブルースをルーツとしながら、コード・リズム・スケールなどをより複雑化し即興など取り入れていきました。
そして何より「逸脱」があります。
逸脱とは、つまり既成概念やルールから“はみ出す”ということです。
元々、黒人たちの文化はカウンターカルチャー的というか
それまでの文化・伝統にだいたい反発して生まれてきました。
「今までに無いことをやるのが最高にクール」
「ルールはぶっ壊すもの」
というマインドです。
日本人はこれめちゃくちゃ苦手やん(笑)
「ルール・規律は守るもの」
「はみ出しものは許されない」
が日本全体の大きな雰囲気です。
もちろんルールや規律を守る人が多いのが
日本の良さでもあります。
治安もいいしね。
でも黒人発祥の文化とはなかなか馴染みません。
根本が違うんですよ。
見ている方向が違う。
日本にいて、日本人で
苛烈な人種差別を受けたり、黒人奴隷のような過酷な労働を強いられている人は
いないでしょう。
社会のルールをぶっ壊してやる、今までの文化を変えてやる
っていう人もほとんどいないでしょう。
だからブルースとかジャズとかのマインドはなかなかわかりません。
ブルースやジャズを理解しようとするなら
やはりルーツを学ぶしかありません。
ブルースの歴史、ジャズの歴史
そして黒人の歴史。
このへんをしっかり学んで
黒人たちの文化やマインドなどがうっすらわかってきたら、
なんとなく弾けるようになるかもしれません。
最後に
「ジャンル」の明確な定義は存在しません。
だからジャンルごとの明確な境界線はありません。
端っこが無い。
だけどジャンルの中心
ジャンルのもつコアな部分は文化とマインドによって確かに存在します。
歴史・文化を学ぶことで少しは近づけるでしょうが
日本人には絶対的に越えられない壁もまた存在するでしょう。
黒人は身内(黒人同士)では、自虐というか
自分らのことを「black」と表現したり、肌の黒さをネタにして笑いあうそうです。
でもそれを白人やアジア人がやると
鬼のようにキレるんだとか。
このへんも日本人にはピンとこないですよね。
どこかの記事でも書きましたが
日本の伝統芸能である能や文楽・歌舞伎、また剣術・忍術などの、
核心的な部分については指南書が存在せず全て口伝だと言われます。
文字に書きおこせない。
つまり簡単に不特定多数の人には伝えようがないということです。
その文化・マインドにどっぷり浸かっていないと大事なことが理解できないことの表れですよね。
着物は胴長・短足の日本人むけに発達してきた文化です。
手足の長い欧米人が着ても似合いません。
歴史・文化というものを互いに尊重しつつ
うまく融合できる部分だけは融合しつつ、
でも適度な距離は保っていきたいと思っています。
理解できんもんはできんからね(笑)
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